事前相談で権限委譲も解決
勘違いしてはいけない点が、そうした報・連・相ツールを活用していれば、「すべて事足りる」としているわけではないことである。フェース・ツー・フェースでのコミュニケーションも大切にし、それらを車の両輪と考えている。だから、帰社後の高吉所長への口頭での報告も、営業マン全員に課せられた義務なのだ。
その理由について高吉所長は「何かいいたくないことがあっても、営業マンのちょっとした表情の変化から読み取れる。成果が芳しくなければ、なぜそうなったのか本人の考えを聞くことで、問題点の所在など細かいニュアンスが理解できて、相談にも乗れるからだ」と話す。
特に力を入れているのが朝の時間の活用だ。始業の午前9時から30分ほど現場の営業マン5人によるミーティングが行われる。リーダー役の伊東主任は「この土地に新しい店ができるなど、前日の営業活動で得た情報を少なくても1つ報告するほか、こんな土地が出てきたのだが、それに相応しいテナント企業はないかといった情報交換がメーンになっている」という。
それが終わると、高吉所長を交えた朝礼が始まる。そこでは高吉所長による最新の受注状況の報告や、各営業マンの成功事例・失敗事例に対する分析・アドバイスなどが行われる。1時間近くかけるときもあるが、営業に対する意識統一や、営業マンとしてのスキルアップにつながるよういつも心がけている。
そうしたコミュニケーションの充実化がもたらした副産物が、権限委譲に対する柔軟な姿勢だ。想定される問題点を事前相談で十分につぶしておけば、権限委譲を強く意識することなく営業活動ができるようになる。もし、見積金額の大幅な修正を求められるようなことがあれば、高吉所長に携帯電話で連絡を取る。そこで高吉所長が即断即決できるのも、個別の案件の内容が頭の中に常にインプットされているからである。