多少のエラーはかまわない
「チャレンジは2つあります。1つは支援物資をどれだけ我々が用意できるのか、そしてもう1つはトラックです」
2011年3月11日夕刻、神戸市東灘区の六甲アイランドにあるプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(以下P&G)本社ビル。29階の一室に、桐山一憲社長を中心に5人の経営幹部が集まっていた。冒頭は、生産、物流などを統括するディレクター、小林茂の発言だ。
この日の14時46分ごろ、太平洋の三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生した。死者・不明者が2万9000人を超す(11年3月末時点)東日本大震災が日本列島を襲ったのである。
最初は、5人以外にも29階にいた幹部がみな集合した。が、桐山はすぐに集合を解く。
「大切なのはスピード。だから少人数でいいんだ」
災害発生時のBCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン=事業継続計画)に沿って、桐山は経営幹部5人のBCPチームを立ち上げたのである。
桐山、小林のほかは、取締役でエクスターナルリレーションズ(ER=広報渉外)のディレクター辻本由起子、人事・総務の責任者、財務の責任者である。
BCPとは、安全性を確保しながら震災などのリスクが発生する前の状態に迅速に復帰させることを目的としたプログラムだ。メンバーがわずか5人なのは、意思決定の迅速化と情報の一元化を図るためだ。
「人数が多いと、情報は錯綜します。指揮系統をシンプルにして、決定の透明性を高めていく。無用の混乱をさせてはいけません」と小林は話す。