ここで疑問が1つ浮かぶ。それは報告すべきことと、報告しなくてもいいことの線引きだ。些細なことまで書き出したり、いい出したりしたら切りがない。それを受ける高吉所長のキャパシティにも限界がある。また、報・連・相に時間を取られ、営業活動の時間が削られてしまったら、本末転倒であろう。

「自分の力量でカバーできることであれば、あえて報告しなくてもいいと考えている。逆に自分の手には負えなくなりそうなことについては、すぐに報告する」と伊東主任はいう。

その手に負えなくなりそうになる前兆が、了解済みだった見積もりの再提出を顧客から求められたり、念押ししておいたアポイントメントの延期を要求されたりすること。そうした場合、顧客サイドに何らかの不都合が生じた可能性が高い。

高吉所長にいわせると、デキル営業マンほど、そうしたいいにくいことを上司にすぐ報告してくるそうだ。「ときには『どうしてそうなったのか』と叱責されることもあるだろうし、上司にマイナス情報は報告しづらいもの。しかし、そのままでは受注に結びつきそうにもない案件をいつまでも引きずることになり、貴重な時間を無駄にするだけ」と高吉所長は指摘する。

また、デキル営業マンであればあるほど、顧客に対する報告・連絡・相談も綿密に行い、信頼関係を強固なものにしていくもの。特にテナント企業にとって出店情報はライバル企業に知られたくないマル秘事項で、自ら表立っては動きにくい。だから同社に委託されるわけだが、土地オーナーとの折衝状況など情報は逐一つかんでおきたい。

しかし、その際にマイナス情報を後回しにされると、出店計画自体危うくなりかねない。だから、営業マンはいいづらいことほどすぐ伝える。その結果、傷口が広がらないうちに善後策も相談できて、信頼関係も一層強固なものになるのだ。