働き方改革が進み、働きやすい「楽な職場」が増えている。社員教育コンサルタントの朝倉千恵子さんは「それでも成長のために敢えて自分に負荷をかける行動は『セルフブラック』と呼ばれ、一流アスリートにもよく見られる。いま『自らやる人』と『やらない人』の二極化が進んでいる」という――。
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平#17
写真=AFP/時事通信フォト
2024年10月28日、ニューヨーク市ブロンクス区のヤンキースタジアムで行われた2024年ワールドシリーズ第3戦、ニューヨーク・ヤンキース戦の4回、打席に立つロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平#17。

ホワイト企業では物足りない若者たち

「こんな環境では成長できない」――。働きやすい環境に優しい上司、誰もが羨むようなホワイト企業に入社したにもかかわらず、そんな理由で退職していく若者がいます。なぜ彼らは「楽な職場」にいながら、わざわざ会社に見切りをつけ退職の道を選ぶのでしょうか?

それは、成長のためには「負荷」が必要だと知っているからです。筋肉も精神力も脳も、負荷をかけることで強くなります。逆に言えば、負荷をかけなければ進化も変化もしないのです。

自分を成長させたいと強く願う人たちの中には、いわゆるプレッシャーの少ない“ホワイトな職場”では物足りず、もっと高い目標を追えるような環境や、挑戦できる環境を求める人も少なくありません。

ブラック企業は淘汰されつつあるが…

とはいえ、もちろんそんな感性を持つ人は全体から見ればごくわずかです。20代でも30代でも40代でも、大半の人は上司には怒られたくないし、楽して給料がもらえるならそちらのほうが嬉しいし、休日には趣味や遊びを満喫したいはずです。その感覚を「怠け者」だと私は思いません。むしろ、人間として当たり前の感覚です。

2000年代中頃から、「ブラック企業」という言葉が使われるようになりました。日本企業特有の長時間労働やパワハラが横行する企業を揶揄したこの言葉は、あっという間に市民権を得ました。

働き方改革の号令の下、ブラック企業を根絶しようとする動きは加速する一方で、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方やワークライフバランスの改善に向けた動きも加速しています。

こうした変化は、一見すると従業員にとって好ましいことだと捉えられますが、本当にそう言えるのでしょうか?