私の人生を変えた一冊
一冊の本が自分の人生を変えた――誰もが、そのような経験を持っているかどうかは、僕にはわかりません。
だからもしかしたら、僕がハッキリと「35歳の頃、そういう本に出会えた」と言うことができるのは、かなり幸せなことなのかもしれません。
山口県の小さな洋装店を父親から譲り受け、四苦八苦していた私が、日本を代表する経営者の末席に加えていただいて、こうして「経営者のあるべき姿とは?」などという取材まで依頼されるようになったのも、まさにその一冊の本、ハロルド・ジェニーンというアメリカの経営者が書いた『プロフェッショナルマネジャー』のおかげだからです。
ジェニーン氏はニューヨーク証券取引所のボーイからスタートし、ITTという通信会社を、20世紀を代表するようなコングロマリット企業に成長させた人物。
58四半期連続増益を果たしたという伝説の人で、その彼が語る“経営の真実”は、それまで「1日1冊読破」を課して濫読していた他のどんな経営書をも凌駕する、圧倒的な迫真力を持っていました。
“ブレない上司像”とは何か、真のリーダーシップとはどういったものか、それらの多くの答えを、僕は、この『プロフェッショナルマネジャー』から教わったと言っても、過言でありません。
このたび、この本の速習版である『プロフェッショナルマネジャー・ノート』の解説をしましたので、その中の一部から例をとって、私が考える理想の経営者像をお話ししていこうと思います。