昨年12月、ダイハツ工業は新車の安全性能を確認する認証試験など25の試験項目で、174個の不正行為があったことを発表した。これを受け、現在も全国4つの完成車工場では生産を中止している。自動車ライターの小沢コージさんは「これだけコスパに特化した自動車メーカーは他になく、日本が世界に誇る文化といえる。不正の罪は重いが、なんとか立ち直ってほしい」という――。
ダイハツ工業の試験認証不正に関する記者会見で陳謝する奥平総一郎社長(左)とトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長=2023年12月20日午後、東京都文京区
写真=時事通信フォト
ダイハツ工業の試験認証不正に関する記者会見で陳謝する奥平総一郎社長(左)とトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長=2023年12月20日午後、東京都文京区

ダイハツの不正行為の悪質性

ま、まさかあのダイハツが……。

ユーザーはもちろんわれわれマスコミ関係者にとっても完全に寝耳に水であり、目を疑うニュースが飛び込んできました。昨年12月20日に突如発覚したダイハツ工業株式会社の前代未聞の認証申請における巨大不正行為です。

認証申請とは、新車を製造する際の車両の性能や安全性に対する確認テストのようなもの。具体的には国交省系審査官の立ち会いの下に行われる「立ち会い試験」と、書類のみの「届け出試験」があり、後者は基本メーカーが申請したデータがそのまま受理されます。

今回は主に届け出試験での虚偽が問題になっており、これは確定申告における税額申請のようなもので、疑いはまず持たれません。大前提となる信頼関係を利用して不正行為が行われたわけで、その悪質性が大きく問われているわけです。

試験のジャンルは大ざっぱに「静的」「動的」「衝突安全」「燃費」「排ガス」性能に関わるもので、振り返ると4~5月に類似不正が発生しており、深刻ではあるものの当初、不正行為はこの数件だけと考えていたと思います。

不正は不正ですが、普通にやればパスする試験を万が一の不合格を恐れ、合格マージンを取るために「不正をする」行為。具体的には、衝突時に内装が鋭利に割れないように事前に切れ込みを入れるような不正でした。

「マジメゆえの不正」では済まされない

結果的にはそんなことをしなくても合格できたようで実力は十分なのに、万が一を恐れて細工しておく。いわゆる秀才がした「しなくてもよいカンニング」のようなもの。

神経質すぎてやる必要のない不正をしている部分もあり、リポートによれば「再テストする時間がない」「試験車両を用意する余裕がない」といった理由で、よっぽど時間がないのか……と知りつつ、ダイハツの上層部としてはそこまで深刻には受け取ってなかったと思います。たまたまこの数件なのだろうと。

ところが今回驚かされたのは、第三者委員会による調査結果で新たに174個という不正行為が発覚。さらに1989年から続いていたという歴史の古さ。多岐にわたる不正が長く続いたことから、前代未聞の全車出荷停止という措置が取られたのだと思います。さらに、先日一部車種においての型式指定取り消しも決まったようです。

たまたまの一過性の不正行為ではなく、長い時間染み付いた虚偽体質なのだと。