コペンが教えてくれた大事なこと
2つ目の思い出は丸目2灯フェイスのキュートさが自慢の初代ダイハツ・コペン。
今2代目が出ている軽2シーターオープンカーです。初代には、当時一足先に出た同じく軽オープンのホンダ・ビート、スズキ・カプチーノとの露骨な違いをつくづく思い知りました。
というのも、今回も売りはコストパフォーマンスであり、パーツの共有性なのです。
競合2車はプラットフォームからほぼ完全新作。ビートはミッドシップ、カプチーノはFR、どちらもパワートレインは既存の改良版でしたが、骨格は新作。まさにバブル期の快作で、軽もオリジナリティに走ったのです。
しかし初代コペンはそれらとはある意味対照的でした。見た目はキュートで、走りも軽快でしたが、骨格は当時のムーヴと同じFFプラットフォーム
コストパフォーマンス優勢の姿勢が出ており、事実価格はビートやカプチーノより安く、ビートが約5年、カプチーノが約6年しか作られなかったのに対し、初代コペンは唯一10年間作られ、現行2代目も生まれました。
長い目で見るとその「使い回し作戦」は大成功。ビジネス的にも文化的にもスポーツカーを根付かせるためには長く作り続けなければならないのです。
同時にスポーツカーも決して走りやカッコ大優先で作ればいいってものじゃない。コストパフォーマンスと利便性も大事。その見過ごされがちな真実を教えてくれたのがコペンだと思います。
スーパーカーブランドとは真逆の姿勢
最近では今や新国民車とも言うべきジャンルを作った軽スーパーハイトワゴン、初代タントもダイハツの傑作車といえるでしょう。
スライドドアが当たり前じゃなかった軽ワゴンの世界に、全高1.7メートル台の車高とスライドドアを持ち込み、いきなり月販1万台弱のヒットを連発。現在となっては、販売数では2011年発売のホンダN-BOXに越されていますが、しっかり人気ジャンルを創りました。
振り返ると、ダイハツの生んだ記憶に残るクルマは、なにか絶対的な価値というより、独特の大衆性やコストパフォーマンスに紐付いていたことに気付かされます。
いわばスーパーカーブランドとは真逆の軽&コンパクトカーメーカーならではの姿勢。美しく、楽しければどんなに高くても良い! というよりもこの価格でこの性能はどうです? というものづくりの姿勢。