スズキは、7年ぶりに主力の小型車「スイフト」を全面改良した。自動車ライターの小沢コージさんは「他社がストロングハイブリッドを主力に据えているのに対して、エンジン中心にすることで低価格を実現した。非常にユニークで思い切った戦略だ」という――。

人気の「小型車カテゴリー」にスズキが出した勝負車

突如、ユニーク過ぎるエンジン中心の国産車が登場しました。その名は新型スズキ・スイフト。見方によっては“時代にそぐわない”マツダCX-60に続く、といえるかもしれません。

2000年に登場した初代モデルを除くと今回で4代目となる全長4メートル弱の大衆コンパクトハッチバックです。

現在この小型車カテゴリーは国内登録車販売ナンバーワンのトヨタ・ヤリスを筆頭に、2000年代に初代がいきなりカローラを抜いたホンダ・フィットや日産ノートなど人気車がめじろ押し。

直近2024年3月の登録車販売ランキングを見ても2位ヤリスで3位ノート、13位フィットと人気高し。

ポイントは全長4メートル前後のコンパクトサイズでありながら、大人5名が乗車できるスペース(リアシートこそ狭めですが)と300リッター前後の広いラゲッジを備えた家庭的かつ効率的なパッケージングであること。加えて、エコかつエコノミカルなパワートレインです。

ヤリスもフィットもノートも「電動化」が前提

はやりの電動化はこのクラスにもしっかり及んでいます。売れ線のヤリスはもちろんフィットもガソリン車と同時にストロングハイブリッドが選べ、特にノートは日産流のシリーズハイブリッド「e-POWER」しか選べません。

逆にこの国産コンパクトでストロングハイブリッドが選べないのはMAZDA 2ですが、代わりに自慢のディーゼルが選べます。海外メーカーですが、中国BYDはほぼ同サイズで背が高めのSUVで「ドルフィン」を発売しており、こちらはバッテリーEVのみ。

イマドキの4メートルコンパクトカーで、電動力の強いストロングハイブリッドもしくはバッテリーEVナシ設定はほぼあり得ないのです。

そんな中、新型スイフトはジャンル最後発でありながら、100%EVはもちろんストロングハイブリッドの設定はゼロ。唯一、モーターパワーが3馬力程度のマイルドハイブリッドを備えるのみ。事実上、電動力ほぼナシで厳しい電動化の波を乗り切ろうっていうのです。