50代元管理職がたどりついた職種の想定外の時給

前出の社長は、希望退職者募集に応募して50代後半で再就職活動を始めた人の事例を紹介する。

「年収1000万円をもらっていた大企業の元管理職の人が800万円でもよいからと探し始めるが、なかなか見つからず、失業期間が1年、2年と延びるケースも珍しくない。また、100社、200社も受けても落ちる人もいる。最後は年収500万円でもよいからと希望条件を下げることになるが、結局、正社員での採用が決まらず、時給1000円程度の駐車場の警備員やビルの清掃などで働く人もいる」

時給1000円ではフルタイムでも16万円(20日=1000円×160時間)にしかならない。年収は200万円にも満たない。この金額であれば退職せずに再雇用で65歳まで会社に残っていたほうがよかったかもしれない。転職活動の失敗が老後の生活を暗転させることになる。

頭を抱えているビジネスマン
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そうならないためには自分の市場価値を直視し、求人企業が求めるスペックが足りなければ必要なスキルを身に付けることも必要だ。

特に中小企業で問われるのは現場力だ。若い頃に一生懸命に学んだ現場の感覚をもう一度取り戻すための学び直しも重要だろう。前出の定年後研究所の池口所長は次のようにアドバイスする。

「60歳定年を機に別の会社に転職した人たちから聞いた話では50代から準備するほうがよいと言っている。世間に通用するスキルを身に付けるには約1万時間かかるといわれている。1日に費やす時間によって年数が変わるが、大体5年ぐらいは必要であり、55歳から始めたほうがよい」

あるいは60歳を迎える人で自分のスキルに自信がない人は再雇用後に転職する方法もある。ただし、65歳前に探して転職することが肝心だ。

「65歳になってから探しても手遅れだ。65歳になってハローワークに行って、たくさん履歴書を書いて応募したが全滅したという話もよく聞いている」(池口所長)

大事なことは再雇用中に意識してスキルを磨き、機を見て転職することだ。

「当所の調査でも再雇用社員に限定し、週3日ないし4日の短日勤務や短時間勤務を認めている企業もある。あるいは週3日勤務で、かつ副業を認めている企業もある。60歳以降の社員に、週1日の副業やボランティア活動を認め、セカンドキャリアの準備に充ててもよいという企業もある。それ以外に国の助成金を使って取得できる資格もある。副業経験や資格取得を通じて再就職の準備をすることもできる」(池口所長)

もしかしたら副業先での働きが認められ、正式に働いてほしいとうオファーがあるかもしれない。いずれにしろ、70歳までやりがいを持って働きたいのであれば、早期に活動を始めるのが鉄則だ。

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