年金支給開始年齢の延長、支給年金の減額……。世界最速の少子高齢化の日本に、近い将来そんな事態がやってくるかもしれない。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「50代以下の世代は70歳まで働くのが当たり前の時代になるのは必至です。同じ会社で再雇用として働くか、再就職するか、熟慮して早めに判断・行動する必要があります」という――。
手で目を覆って嘆くスーツを着た男性
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年金支給開始年齢の延長、支給年金の減額…

フランス政府が公的年金の支給開始年齢を64歳に引き上げたことで大規模な暴動が発生したが、これは日本にとって対岸の火事ではない。

2022年の出生数が80万人を割るという世界最速の少子高齢化の進行が将来の年金財政に暗い影を投げかけている。

現行の65歳の年金支給開始年齢が数年程度延長される、あるいは年金の減額が発生する可能性も高くなっている。少なくとも今の50代を含む若い世代にとって老後の生活を考えると、70歳まで働き続けることが当たり前の時代になるだろう。

実際に60歳定年後も働く人が増えている。

総務省の調査によると、60歳以上の就業率は、

60~64歳 73%
65~69歳 51%
70~74歳 34%

となっている(「労働力調査」2022年)。

50代が最初に選択を迫られるのが60歳定年後、会社に残って働くか、それとも別の会社に転職するか、起業するか、である(もちろん完全リタイアという選択肢も)。

高年齢者雇用安定法は65歳までの雇用確保措置を義務づけており、実際に定年後も同じ会社で働いている人は多い。ただし、多くの問題を抱えている。

厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(2022年12月16日発表)によると、65歳までの雇用確保措置の内訳は以下のようになっている。

定年制の廃止 3.9%
定年の引き上げ 25.5%
継続雇用制度の導入 70.6%

継続雇用制度とは、本人が希望すれば引き続いて雇用する「再雇用制度」などのことを指し、この再雇用の導入割合が圧倒的に高い。

企業規模別では従業員301人以上では継続雇用制度の導入企業が83.3%と、大企業ほど継続雇用制度を導入している企業が多い。

しかも再雇用で働く人は1年ごとに契約を更新する有期雇用契約の非正規社員が多い。なぜ定年延長ではなく再雇用なのか。