再雇用が嫌なら定年前に転職する方法もあるが……

それなら少なくとも70歳まで働くことを見据え、60歳の定年前後に転職するのも一つの選択肢だ。

たとえば転職後の年収が350万円でも、会社に頼られ、自分の好きな仕事がやれて70歳まで働ける会社を見つける。前述の再雇用で年収350万円もらい、65歳まで5年間限定で働くよりも総年収も増え、働きがいも得られるだろう。

ただし会社に長年勤務し、管理職の経験しかない人が初めて転職するのは相当の勇気がいる。ただ、一般社団法人定年後研究所の池口武志所長はこう言う。

「長年マネジメント経験しかやっていないから、どこも通用しないと思っていた人が全然違う場所で必要とされるケースもある。中小企業や人材不足で悩んでいる医療・介護業界、社会福祉団体などでは民間企業でマネジメントをしてきた管理能力や問題発見能力などを頼りにされることも多い」

その上で一つのケースとして「社会福祉法人は近年、会計の透明化が求められ、しっかりしたディスクローズ資料を作成しないと自治体などの公的補助金が支給されにくくなっている。しかしそうしたノウハウに乏しい。民間企業では当たり前のディスクローズ資料を作った経験のある広報の人などが重宝されているという話もよく聞く」(池口所長)と語る。

深夜のオフィスで一人残業をする男性
写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
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とはいえ、落とし穴もある。

転職活動を始めるにあたって必須なのは、自分の職業キャリアを棚卸しし、自分の“売り”となる経験やスキルを明確化すること。その上で経験・スキルがどの程度通用するのか、求人企業とのマッチングなどについて事前にリサーチすることが不可欠だ。

こうした準備をしないで求人企業に応募し、面接で過去の実績だけを強調する人もいる。

そういう人は「間違いなく失敗する」と語るのはミドルシニア専門の転職支援サイトの社長だ。

「雇う側からすれば、今までの経験やスキルを活かし、入社後にどんな貢献をしてくれるのか、を一番聞きたい。過去の実績などは職務経歴書を見て、少し話を聞けばわかる。ただ、前職でこんな仕事をしてきたという経験や実績だけを強調しても相手の会社には全然響かない。同じことを繰り返して落とされ続けるシニアは多い」

もう1つの失敗するパターンは、前職の年収にこだわり、大幅に下がることを嫌がることだ。