1月27日のフジテレビの「やり直し会見」は、10時間半に及ぶ異例の長丁場となった。元関西テレビ記者で、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「怒号やヤジが飛び交う様子を見て『フジテレビより記者たちのほうがおかしい』と感じた人も多いだろう。背景には、2010年代にはじまった『記者会見のエンタメ化』があるのではないか」という――。
あの“エラそうな記者”は、誰?
「何やってんですか、一体!」
TBS「報道特集」特任キャスターの金平茂紀氏が、1月27日のフジテレビによる記者会見の席で、投げかけた。
金平氏は、TBSに入社後、モスクワとワシントンの支局長を務めただけではなく、同社の執行役員にまでのぼりつめた、報道業界の「大物」である。
フジテレビの港浩一社長(当時)に対して、「私、業界のことよくわかってますけども」と前置きした上で、NHKの会長や民間放送局の社長の記者会見でもテレビカメラを入れさせない、と理解を示しつつも、厳しく問いかけている。
金平氏は、壇上に並んだ港氏らとほぼ同世代であり、長い年月をテレビの世界で生きてきた、いわば同僚のような感覚で、「何やってんですか」と叱りつけたのである。
「私も同じテレビの仕事をしてきた人間だから申し上げるんですけどね」と言葉を継ぎ、「何か逃げてるような印象を受ける」と述べて、「自分たちで血を流すような努力をして検証番組を作るとかね。そういうようなお考えっていうのはないんですか」と質している。
視聴者が抱いた「記者」に対する嫌悪感
つづけて、第三者委員会などが「はじめに結論ありきみたいなことで、本当の意味での真実を解明するってことにならないケースがたくさんある」のだと、みずからの見解も披露している。
金平氏の意見に賛同する人もいただろう。フジテレビの遠藤龍之介副会長に「検証番組の制作」を認めさせたところは、良い質問だったと感じる。
けれども、金平氏のように、自説を展開する、というか演説のような「質問」をする「記者」に対する嫌悪感のほうが、この会見を見ている視聴者の側に共有されたのではないか。
こう考えるのは、いまから20年前に私が取材に携わった、JR西日本「福知山線」の脱線事故を受けた記者会見を思い出したからである。