火に油を注いだフジテレビ社長の会見
タレントの中居正広氏と女性とのトラブルにフジテレビの社員が関与していたと、週刊文春などが報じている。
フジテレビの港浩一社長は、今月17日、この問題が報じられてから初めての記者会見で、陳謝した。その会見は、これまでの「炎上」の火に油を注ぐ結果となっている。
たしかに、指摘すべき点は、枚挙にいとまがない。
今回、フジテレビは、記者クラブ(「ラジオ・テレビ記者会」、「東京放送記者会」)に加盟している新聞社・テレビ局・ラジオ局以外は、会見に参加させなかった。さらに、フジテレビ以外の民放テレビ局は、「オブザーバー(立会人)」扱いで、質問の権利を与えなかった。
それどころか、テレビ局の記者会見であるにもかかわらず、生中継はおろか、動画撮影を認めなかった。フジテレビは、今回は2月に予定されていた「定例会見」を前倒ししただけであり、枠組みをそのまま使っているとしているが、そんな言い分は通用しないだろう。
NHKニュースでは、会見の映像ではなく、「写真」=静止画、がまるで“紙芝居”のように繰り返された。異様な光景と呼ぶほかなく、かえって、フジテレビの後ろめたさや、やましさを想像させる結果となったのではないか。
静止画しか認めなかった、といえば、以前の国会の証人喚問が想起されるからである。
議院証言法(議員における証人の宣誓及び証言等に関する法律)が1988年に改正され、証人喚問中の撮影が禁止された。その後、1999年にふたたび改正されるまでの約11年間にわたって、国会中継では、証言の前に撮影した静止画が流されていた。
あの記憶を、今回の港社長の会見のニュースを見て、思い出した人も多いだろう。
質問に対して、「調査委員会に委ねる」を連発
映像をベースにする報道機関であり、何より、テレビ局なのに、自分たちが、どのように映るのかを想像できていない。免許事業として公共の電波を預かる会社であるにもかかわらず、説明責任を果たそうとせず、記者からの質問に対して「調査委員会に委ねる」という回答を連発したのでは、会見の意味がない。
自社のニュースや情報番組では、他の企業の不祥事を糾弾するくせに、自分たちには、甘い。記者会見をオープンにしなかっただけではなく、出席者にさえ質問させなかった姿勢は、いくら非難してもあまりある。
もとより、昨年末に週刊文春が中居正広氏と女性とのトラブルについて報じた際に、フジテレビがウェブサイトに出した「一部週刊誌等における弊社社員に関する報道について」と題する文書からして、対応を誤っていたと言わざるを得ない。
この文書のままの姿勢、つまり、「当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません」が正しいのなら、3週間以上がすぎたいまになって、「第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げる」必要など、まったくないのではないか。