テレビを見ないのに、なぜ関心が集まるのか

フジテレビには自浄作用があるに違いない、とか、社内の志の高い人たちが、きっと生まれ変わらせてくれるはずだ、といった期待の声は小さい。SNSやヤフコメなどでは、「停波」や「免許剥奪」を求める声が見られる。

NHKをはじめとするテレビ各局が大々的に報じたり、X上で「フジ社長」や「フジ会見」がトレンドに上がったりするのは、「テレビ離れ」と関連しているのではないか。

メディア環境研究所による「メディア定点調査2024」によれば、2024年時点のテレビ視聴時間は、1日あたり122.5分、と、携帯・スマホの161.7分を大きく下回り、16年前から約50分減っている。

テレビを見ない人が増えているのに、なぜ、これほどまでにフジテレビに関心が集まるのか。

かつて「女子アナ」と呼ばれた人たちだけではなく、テレビ局で働く人たちや、その社内の雰囲気自体が、キラキラして輝いている。そんなイメージがあった。

フジテレビで放送されている「新しいカギ」の名物企画「学校かくれんぼ」に出演する小学生から大学生に至る若者たちの表情は、たしかに生き生きとしている。

しかし、昨年、石丸伸二氏が東京都知事選挙で2位につけ、斎藤元彦氏が兵庫県知事選挙に再選されるに至り、「オールドメディアの敗北」が言われた。

テレビに出ることや、テレビの中の人たちは、これまで憧れの的だったものの、そんな時代は過ぎ去ったのである。いまや逆に、テレビ=既得権益として、反発し、恨む対象に成り果ててしまったのではないか。

石丸伸二氏(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

世間を甘くみてきたツケ

私がかつて勤務していた関西テレビ(フジテレビ系列)は、2007年、製作していた「発掘!あるある大事典Ⅱ」という番組で実験データや専門家のコメントを捏造し、民間放送連盟から除名されるなどの処分を受けた。フジテレビは、2020年、「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」に出演していた木村花さんが亡くなり、翌年、BPO(放送倫理・番組向上機構)に「放送倫理上問題があった」と判断された

2007年当時はもちろん、2021年でさえ、まだテレビへの望みは残っていた。メディアの王様であり、影響力が大きく、そして何より、テレビ局側に反省し出直す底力がある、と信じられていた。

ところが、テレビ局側は、というよりも、フジテレビは、変わらないどころか、世間を甘くみてきた。その姿勢は、今回の港社長の会見が象徴している。「調査委員会」を盾に内容は空疎で、形式面でも不備しかない。そんな会見を開くのは、いまだに私たちをナメている証拠にほかならない。

もはや、世間は、こんなフジテレビを許せない。それが、今回、フジテレビへのバッシングが止まない理由である。