新型コロナウイルスの影響は、人が密集する鉄道の廃線や車両の引退セレモニーにも及んでいる。なぜ、鉄道イベントに多くの人が集まるのか。鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏は「コレクションに加えて体験重視のファンが増えていることが大きい。彼らが”節目”に集まることで、イベントの混乱を招いてしまっている」と指摘する――。
JR山手線「高輪ゲートウェイ駅」を出発する始発電車を見送る中村多香駅長=2020年3月14日午前4時34分
写真=毎日新聞社/アフロ
JR山手線「高輪ゲートウェイ駅」を出発する始発電車を見送る中村多香駅長=2020年3月14日午前4時34分

密集を避けるため、ラストランを2週間以上前倒し

4月17日、JR北海道の札沼線北海道医療大学―新十津川間(47.6km)が85年の歴史に幕を閉じた。この区間は、経営難に苦しむJR北海道が2016年、単独では維持が困難な線区として公表した10路線13線区のうち、極端に乗客が少なく、バス転換を目指すとされた5路線5線区のうちのひとつ。沿線自治体と協議を重ねた結果、2020年5月7日をもっての廃止が合意されていた。

最終列車の運転計画は新型コロナウイルスの影響で規模縮小、前倒しと二転三転した。当初、5月6日まで通常運行する予定だったが、ラストランに乗客が集中し混雑が発生することを避けるため、5月2日~6日は1つ手前の石狩当別―新十津川間の列車を全車指定席で運行すると発表した。

しかし、4月15日になって、ゴールデンウイーク前の運行に多くの人が詰めかける可能性を考慮し、最終運行日を24日に前倒し。その後、16日に緊急事態宣言が全国に拡大したため、同日夜にさらなる前倒しを決定。翌17日の運行をもって営業を終了した。

JR北海道としては、多くの人が押しかけて、「密」な状況を生み出すことへの恐れが、それほどまでにあったということだろう。