JR東日本は、利用する時間帯によって運賃が変わる「変動運賃制」を検討すると発表した。利用者減による大幅な減収を食い止めるためというが、実現可能なのだろうか。鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏は「変動運賃が導入されれば定期券が値上がりすることになる。テレワークの普及もあり、今後は『定期券離れ』が進むだろう」と指摘する――。
JR東日本山手線日本の電車
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JR東社長「以前のように利用客は戻らない」

JR東日本の深澤祐二社長は7月7日の定例会見で運賃制度の見直しに向けた議論に着手すると表明した。7月7日付朝日新聞デジタルによれば、深沢氏は都内で開いた定例会見で「以前のように利用客は戻らないと思う」との見通しを示し、「長期的に経営が成り立つ形で、さまざまなコストやダイヤ、運賃の見直しのため検討を深めている」と述べた。その上で運賃が「利用客が多い時間帯と少ない時間帯で変動する仕組み」を例に挙げた。

またJR西日本の長谷川一明社長も22日の定例会見で、「利用客はコロナ前の状態には戻らないという前提に立つ必要がある。分散乗車を進め、利用時間帯を平準化することは乗客にとっても事業者にとっても望ましい」と言及。新幹線を含む全路線を対象に変動運賃制導入の検討を始める方針を明らかにしている。JRが提起する「変動運賃制」は近い将来、大手私鉄や地下鉄に波及する可能性が高い。

JRをはじめとする鉄道各社は現在、出発地から目的地までの距離に応じた運賃制度を取っており、運賃はいつ乗車しても変わらない。しかし、変動運賃制では運賃が時間帯ごとに変動する。電気料金のように需要が大きい時間帯は価格が上がり、需要が少ない時間帯は価格が下がるという仕組みだ。

第1四半期は1553億円の赤字に

具体的には利用者が多いラッシュ時間帯は運賃が割り増しになり、土休日や日中時間帯であれば運賃が割引される。新幹線や特急列車であれば、航空機やホテルと同じように、繁忙期は値段が上がり、閑散期なら値段が下がることになる。

こうした議論は決して新しいものではない。最近では東京都が2019年度予算に「快適通勤の実現に向けた混雑緩和策等の検討調査」の項目を設け、この中で「時間帯別運賃」の検討に着手したなどの事例がある。