パンデミックは「想定内」でも経済対策の備えなし

緊急事態宣言の解除で経済活動の再開が始まっている。自粛を緩めることによる新型コロナウイルス感染の再拡大、いわゆる「第2波」が危険視される。しかし、これ以上の「経済凍結」は経済システムを破壊し、倒産や失業を増大させかねない状況で、制限緩和は致し方ない。

新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言を全国で解除=2020年5月25日
写真=AP/アフロ
新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言を全国で解除=2020年5月25日

そんな中で、政府の経済対策も新型コロナ後をにらんだ「第2ステージ」に移りつつある。当面の資金繰りをつなぐためにとにかくお金をばらまく「第1ステージ」もまだ十分とは言えず、スピードが遅いのも事実だ。だからこそ「第2ステージ」を早急に準備しておく必要がある。

何せ、4月1日に安倍晋三首相が打ち出した「アベノマスク」ですら届いていない世帯が多く、その後、スピードが短縮できるからという理由で4月16日に表明した国民一律10万円の現金支給もほとんど届いていない。日本の政府の仕組みが危機時に「即応できないか」を国民に思い知らせるには十分だった。ウイルスのパンデミックは「想定外」ではなかったはずだが、経済対策の発動については全く備えができていなかったことが露呈してしまったわけだ。

「Go To キャンペーン」への批判の声

そんな中で、観光振興のための「Go To キャンペーン」(仮称)について批判の声が大きい。4月30日に国会で成立した補正予算に含まれ、1兆6794億円が割り振られているもので、「Go To Travel」「Go To Eat」「Go To Event」「Go To 商店街」などから成り立っている。新型コロナ「流行収束後の一定期間に限定」した官民一体型の消費喚起キャンペーン、という位置付けだ。

具体的には、旅行商品を購入した場合、ひとり1泊2万円を上限に、半額相当分のクーポンを配ることや、オンライン飲食予約サイトで飲食店を予約した場合、ひとり1000円を上限にポイントを付与することなど、消費を元に戻すために直接助成金を配ることを計画している。

批判の声の多くは、緊急事態宣言が緩和されたとはいえ、新型コロナ蔓延が完全に終息したわけではなく、県境を越えた移動も自粛が求められている中で、「旅行に行こう」というのはさすがに早過ぎだろう、というものだ。