回復策の導入が遅れれば、飲食店や観光業は潰れる

確かに正論に違いない。だが、本当に終息してからキャンペーンを始めて、実施までにどれぐらいの時間がかかるのかも考えておく必要がある。今回、多くの国民は、政府が実施を決めてから実際に動き出すまでに、早くても数カ月を要することを痛感している。実際、この「Go To キャンペーン」も4月30日に法案が通って、実際に実施されるのは5月末段階で「7月の早い時期から」とされている。まあ、国がやることなので、遅れることはあっても、早まることはないだろう。

関西の観光地の老舗旅館経営者も、「政府による回復策の準備には2、3カ月はかかるので、導入が遅れれば、その前に飲食店や観光業は潰れます」と悲痛な声をあげている。「第1ステージ」の救済策が終わってから「第2ステージ」の回復策を準備するのではなく、同時にやってくれというわけだ。

通常の「お役所仕事」だと、期間を設けて、その間に何としても実施して、期日が来たら終わり、というのがパターンだ。せっかく予算に盛り込んでも年度内に「消化」できなければ予算は消えてしまうので、何が何でも年度内に執行しようとする。実施が必要なタイミングかどうかは関係なくなってしまう。

無理な旅行の促進は、感染再拡大を招く

例えば、現在行われているキャッシュレス決済時に5%分のポイントを還元する「キャッシュレス・ポイント還元事業」の期限は6月末だ。さすがに延長することになるだろうが、まだ正式決定はない。経済産業省によれば、この事業で、2019年10月1日~2020年3月2日までに対象となった決済額が約6兆5000億円にのぼり、約2690億円がポイントとして還元されたという。これは新型コロナが本格的に蔓延する前までの統計だが、緊急事態宣言もあって、非接触での決済などは増加傾向にあると思われ、その後、キャッシュレスの比率は高まっているとみられる。

中小・小規模事業者での還元額は2310億円と全体の86%にのぼっており、6月末でこれを止めると、消費にマイナスに働くのは確実だ。止めるタイミングとしては最悪、ということになる。

「Go To キャンペーン」も始めておいて、本格的に旅行を奨励するかどうか、いつまでキャンペーンを続けるかどうかは、柔軟に対応できるようにしておくべきだろう。1年単位の予算というのが常に問題になるが、タイミングとして不要なものは無理に予算消化せず、次年度に繰り越すか、次年度予算に優先的に盛り込むような対応をする必要がある。終息していない中で無理に旅行を促進すれば、感染を全国に再拡大することになりかねない。