1日当たり350万人以上が利用する新宿駅は、「世界で最も混雑した駅」としてギネス記録に認定されるほど巨大なターミナル駅だ。地下の駅構内は広く複雑で、新線新宿駅から西武新宿駅に行くには徒歩15分以上かかる。なぜこのような形になったのか。鉄道ジャーナリストの枝久保達也さんが解説する――。
2011年6月6日の新宿駅
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「世界で最も混雑した駅」としてギネス認定されるほど

JR東日本は7月9日、2020年度の駅別利用者数を公開した。最多は山手線、中央線、埼京線などが発着する新宿駅で、乗客数は1日当たり47万7000人。新型コロナの影響で前年比38.5%の大幅な減少となったが、依然として日本一の利用者数を誇る大ターミナルである。

新宿駅にはJR東日本の他、小田急電鉄、京王電鉄、東京メトロ、都営地下鉄が乗り入れており、少し離れているが西武鉄道の西武新宿駅とも連絡をしている。

その規模はJRだけで1番線から16番線まであり、加えて小田急が1番線から10番線(1番線は現在は使われていない)、京王が1番線から5番線、東京メトロ丸ノ内線が1番線と2番線、都営大江戸線は新宿駅と新宿西口駅にそれぞれ1番線と2番線があり、合計すると37の乗り場があることになる。これはJRと東京メトロ合わせて30の乗り場がある東京駅を上回る。

これら各線の乗降客数を合算すると、1日当たり350万人以上(コロナ前)が利用している計算となり、これは「世界で最も混雑した駅(the world’s busiest station)」としてギネス記録に認定されている。

そんな新宿駅は駅構内もまた複雑だ。改札口は大きく分けて東口、西口、そして甲州街道に面した南口の3カ所にあり、加えて近年は甲州街道の反対側に新南口が開設されている。目的の改札口になかなかたどり着かず、駅構内をぐるぐると回ってしまった経験がある人も多いだろう。かくいう筆者も、こんな仕事をしているくせに頻繁に迷ってしまう。

東口、西口、南口…迂回しないとどこへも出られない

新宿駅を分かりにくくしている原因のひとつが回遊性の悪さだ。駅の東西を結ぶルートは、駅の外では駅の南側を陸橋で越える甲州街道、駅の北側で線路をくぐる靖国通り、思い出横丁に通じる角筈地下道、駅構内では地下鉄丸ノ内線に沿って設けられたメトロプロムナードなどがあるが、いずれも大きな迂回が必要だった。

だが近年、新宿駅の回遊性を向上させようという動きが進んでいる。昨年7月には東口改札と西口改札を移設して東西自由通路が設けられ、駅構内の東西の移動は大きく改善された。さらに新宿区は、2035年をめどに線路上空に歩行者デッキを整備し、乗り換え改札口を新設する計画を立てており、7月7日に新宿駅直近地区土地区画整理事業の事業計画を決定している。

東京新宿地下通路
出典=imahachi.com