そのためこの間は新宿駅構内の乗換通路が頻繁に変更となり、また仮囲いが設置されて景色が変わってしまうなど、利用者を多いに悩ませることとなった。新宿駅は分かりづらいと思っている人の多くは、日々変化する新宿駅で迷ったトラウマがあるからだろう。
工事の過程では、案内・警備を担当した三和警備保障に所属する佐藤修悦さんが、仮囲いにガムテープを貼って独自の案内を展開。独特なフォントが「修悦体」として話題になったことも、新宿駅工事が生み出した副産物のひとつと言えるかもしれない。
街を変え、人を呼び込む”未完成”の駅
そして最後に、新宿駅をある意味では一番ややこしくしたかもしれないのが大江戸線の開業である。大江戸線は1997年に新宿駅まで到達し、2000年に環状部が開通し全線開業を果たした。1997年に開業したのが新宿駅、2000年に開業したのが新宿西口駅だ。新宿駅は都営新宿線の新線新宿駅と連絡しており、新宿西口駅は丸ノ内線新宿駅と連絡している。
東京メトロと都営地下鉄を利用すると運賃が70円割引されるが、大江戸線新宿駅と丸ノ内線新宿駅間では適用されない。また新宿駅から飯田橋方面に、新宿西口から六本木方面を利用する場合は、都庁前駅で乗り換える必要がある。そのため利用する方向によって新宿駅と新宿西口駅を使い分ける必要がある。
なぜこのようなややこしい構造になったのか。山手線のような環状線にする案もあったが、新宿駅西口にはそれを収容できるスペースがないため、やむなく都庁前で接続する“6”の字型の路線になったようだ。
新宿駅の140年近い歴史を振り返ってみると、内藤新宿のはずれに置かれた田舎駅であった新宿駅が、鉄道開通によって人が集まり街となり、街の成長が新たな人を呼び込んだというダイナミズムを見ることができる。その変化は新宿という街が変わり続ける限り止まることはないだろう。
だが冒頭に記した通り、新宿駅はこれまでのような拡大一辺倒を改め、使いやすさを追求する方針に転換されつつある。2025年に新宿駅は開業150周年を迎えるが、計画中の改良工事の完成は早くて2035年、開業160周年の年になる。もっとも、新宿駅が「完成」を迎えるころには新たな工事が始まっているのだろう。