大手私鉄16社の中間決算では、全社が大幅な減収を記録し、赤字を計上した。中でも赤字幅が大きい2社が、西武ホールディングスと京成電鉄だ。ジャーナリストの枝久保達也氏が解説する——。
報道陣に公開された西武鉄道の新型特急車両「Laview(ラビュー)」(手前)。奥は現行の「レッドアロー」
写真=時事通信フォト
報道陣に公開された西武鉄道の新型特急車両「Laview(ラビュー)」(手前)。奥は現行の「レッドアロー」=2019年2月14日、埼玉県所沢市

関東は西武、関西は近鉄が大幅赤字に

大手私鉄16社の中間決算は、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な減収減益となり、全社が経常赤字となった。各社の中間決算の概要を見ていこう(図表1)。

大手私鉄16社の中間決算

関東圏では西武ホールディングス(HD)の約346億円の経常損失が最大。東京メトロが約265億円、小田急電鉄が約220億円で続いた。関西圏では近鉄グループホールディングスの約438億円が最大で、阪急阪神ホールディングスが194億円、京阪電鉄が約60億円の経常赤字。

一方、赤字額が少なかったのは関東圏では相模鉄道、関西圏では南海電鉄だ。連結売上高に占める経常損失の割合でみると、西武HDの22.4%が最大で、京成電鉄が20%、東京メトロが18.9%、近鉄GHDが15.5%と続く。西武HDと近鉄GHDはホテル・レジャー部門の赤字が、京成と東京メトロは鉄道部門の赤字が影響した。

緊急事態宣言の発出があった第1四半期と比べて、第2四半期は各社とも赤字額は縮小しており、南海電鉄は黒字化、京阪電鉄も黒字目前まで来ている。南海電鉄は大手私鉄では唯一、2021年3月期の業績予想が黒字の見込みだ。

本業の運輸部門は京王、東急など4社が痛手

鉄道事業を中核とする本業の運輸部門は各社とも大きな痛手を受けた。上半期の鉄道の輸送人員は京王の昨年同期比39.5%減を筆頭に、東急の同38.5%減、東京メトロの同38.2%減、小田急電鉄の同37.6%減と、東京都区部に路線網を持つ事業者の落ち込みが目立った。最も減少率が少なかった相鉄で同29.7%減と、各社約30~40%の減少となった(図表2)。

上半期の鉄道の輸送人員

第1四半期の運輸事業の営業赤字は、相鉄の約14億円を除いて各社大幅な赤字を記録した。しかし、第2四半期の運輸事業の営業赤字は東京メトロの約92億円を除けば、各社20億~60億円程度まで赤字額を縮小させており、東武鉄道と阪急阪神HDは黒字化。西武HDと相鉄も黒字化目前まで迫っている。

定期収入は、利用減にもかかわらず多くの事業者で平均単価が増加した。鉄道利用者は通勤・通学定期券を利用する定期利用者と、普通券・回数券などを利用する定期外利用者に分類できる。定期券は割引率が高いため、定期利用者の平均単価は少なくなる。定期券の割引率は1カ月定期、3カ月定期、6カ月定期と購入期間が長くなる方が割引率は高くなる。前年同期と比較して平均単価が上がっているのは、新型コロナ感染拡大の状況を鑑み、定期券の購入期間を短縮した影響と考えられる(図表3)。

定期旅客平均単価