蒲田と蒲田を結ぶ「かまかま」線とは?
蒲田と蒲田を結ぶ「蒲蒲線」と聞いたら、首都圏在住の人であっても戸惑うかもしれない。正確にはJR東日本・東急電鉄が発着する蒲田駅と、京浜急行電鉄の京急蒲田駅という2つの蒲田駅を結ぼうという鉄道構想である。
その蒲蒲線がいよいよ実現に向けて動き出すことになった。東京都大田区は6月6日、蒲蒲線の整備スキームや整備費用の負担について、東京都と費用負担の割合などについて合意したと発表。2030年代後半の開業に向けた準備が本格化することになった。
約800メートル隔てた2つの蒲田駅を結ぶといっても、もちろんその短区間を行き来するだけの路線ではない。多摩川―蒲田駅間を結ぶ東急多摩川線を一駅隣の矢口渡駅付近から地下化し、蒲田駅、京急蒲田駅の地下にホームを新設。そのまま進み京急空港線の大鳥居駅付近で地上に合流し、羽田空港まで直通する構想だ。そのため蒲蒲線には「新空港線」というもうひとつの名称があり、大田区は公式にはこちらを使用している。
「都心―羽田」と「区の交通整備」の2つの顔
蒲蒲線と新空港線という2つの名称は、そのまま期待される整備効果の違いを表している。「新空港線」としては、東急多摩川線、渋谷発着の東横線沿線だけでなく、東横線と直通運転し、池袋を通る地下鉄副都心線、埼玉方面を繋ぐ東武東上線、西武池袋線の羽田空港アクセス向上が期待される。
一方、「蒲蒲線」の期待は大田区東西移動の改善である。大田区はJR京浜東北線と京急本線が南北に走り、東京都心と横浜の両方に直結しているが、東西は東急多摩川線、池上線が発着する蒲田駅と、京急空港線が発着する京急蒲田駅の間が繋がっていないため、区内の交通ネットワークが東西に分断されているという問題があった。
大田区の鉄道・都市づくり課に話を聞くと、東急線沿線の区民からは京急蒲田駅近くにある大田区産業プラザPiOへの移動が不便という声が、逆に京急線沿線の区民からは大田区役所への移動が不便との声があがるといい、区の中心が分散していることの弊害が都市計画上、多数生じていたようだ。
そこで2つの蒲田駅のミッシングリンクを解消することで、1つの大きな蒲田を構築し、これをきっかけに各線沿線のまちづくりを推進することで、区内の東西移動を活性化。さらには大田区を越えた移動を創出しようというのが蒲蒲線の狙いである。