「職場では『将来どうなるのか』と混乱している」
JR東日本が鉄道人員4000人を縮小し、不動産などに再配置するという。この衝撃的なニュースを報じたのは8月31日付日本経済新聞(電子版)だ。JR東日本の深澤祐二社長は日経の取材に対し、鉄道事業の運営に必要な人員数を現在の約3万4000人から今後、3万人未満に減らし、不動産や流通などの成長分野へ回す方針を明らかにした。
一見すると駅員や乗務員4000人がまとめて畑違いの部門に転属させられるかのような印象を抱くタイトルだ。
同社の組合のひとつ「JR東日本輸送サービス労働組合」は9月5日の機関紙で、説明もないまま報道が先行したことで「職場では『将来どうなるのか』と不安の声が出され掲示もされず混乱している」と会社を質している。
これに対し会社側は、2018年公表のグループ経営ビジョン「変革2027」を踏まえた内容であるとして、削減は退職の他に、ワンマン運転・自動運転などの業務の効率化によって実現。配置転換にあたっては面談で意向を把握し、一方的かつ強制的には行わないと説明したそうだ。
「運輸」と「運輸以外」の収益比率を5:5に
同社のコーポレート・コミュニケーション部門に話を聞くと、削減の明確な期限は定めておらず「社会の急速な変化等を踏まえながら適切なタイミングで達成できるよう検討」するとしつつも、「将来的に運輸と運輸以外の収益比率5:5を実現する観点から、鉄道事業の効率化によって生じた余力を成長分野で活用し、運輸、生活サービス、IT・Suicaの3事業を融合させてシナジー効果を高める」と説明した。
要員削減は基本的に定年退職等の自然減で対応しつつ、「社内公募制を含め、人事異動により当社グループ内の労働移動を促進していきたい」としており、日経の見出しから受ける印象とはトーンがやや異なる。
会社が仕掛ける大きな「改革」を現場の社員はどう受け止めているのだろうか。同社社員に話を聞くと、非鉄道部門に回されるのではないかという不安と動揺がありつつも、同時に諦めに似た空気が漂っていると語る。
JR東日本は、最大労組であった東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)が2018年に分裂し、社員の大多数が非組合員となって以降、同一業務が10年を超えないように異動または担当を変更する「新たなジョブローテーション」、従来の枠組みを超えて複数の業務を兼務する「現業機関における柔軟な働き方」制度などを立て続けに導入してきた。