改札口の無人化やワンマン運転も増えている
今後5年間も同じペースで自然減となれば誰一人、鉄道の現場を離れることなく目標が達せられるのだが、残念ながら状況は大きく変わる。国鉄は1982年を最後に新規採用を停止しており、同年に高卒で入社した人は2024年に60歳を迎える。つまり国鉄採用者がほとんどいなくなる。2017年に1万4190人いた55歳以上の社員(鉄道以外も含む、以下同)が、2022年には4200人まで減っていることもこれを示している。
退職者数が減るなら新規採用を抑制するしかない。同社はコロナ以前、中途を含めて毎年2000人弱の新規採用を行ってきたが、2021年度は約1400人、2022年度は約700人、そして2023年度は約500人と年々、削減している。
今後も同程度で推移するのであれば5年間で2500人、2027年までに退職する4200人から差し引いて1500人程度の減少となる。とりあえず計算できるのはここまでだ。
要員数自体の削減は今後、さらに加速するだろう。近年は「みどりの窓口」の閉鎖(券売機への置き換え)や改札口の無人化を進めており、駅業務の一部ないし全部をグループ会社・JR東日本ステーションサービスに委託する動きも広がっている(委託駅は2013年度の148駅から2020年度は336駅に増加した)。
乗務員については車掌が乗務しないワンマン運転を地方ローカル線だけでなく首都圏ローカル線にも拡大しており、山手線や京浜東北線などの都心線区でも2025年以降の導入を検討中だ。また山手線や新幹線でドライバーレス運転を実現するための自動運転技術の開発も着々と進んでいる。
「鉄道」と「非鉄道」=2:8のような働き方も
この他、車両や線路、電気設備についても省メンテナンス化が進んでいる。また今後は決まった期間で定期点検する「TBM(Time Based Maintenance)」から、オンラインで常時状態監視することで必要に応じて点検・修理を行う「CBM(Condition Based Maintenance)」に転換して、保守に必要な人員とコストの削減を図る。
では残り2500人はそのまま鉄道から引き離されるかというと、そう単純な話でもない。今回、削減の方針が示されたのはあくまで「要員数」であって、鉄道現業に就く社員数が同数、削減されるとは限らない。国鉄採用職員の事例で見たように、社員数が要員数に先んじて減ると仕事が回らなくなるため、社員数は要員数を追って減少する。
また前掲の日経新聞の記事にあったように、企画部門の社員が乗務員を兼務し、業務をシェアリングする形の要員削減も考えられる。この場合、鉄道部門か非鉄道部門かではなく、前者の割合が2割、後者の割合が8割というような働き方になるのかもしれない。
そもそも「4000人」という数値はJR東日本単体の目標値であって、グループ会社は含まない。つまり委託駅の増加は、連結要員数で見れば変わらないが、単体では要員数の減少につながるのだ(過渡期は本体の駅員が出向することで、要員数と社員数のギャップを吸収することも考えられる)。