日本人は全員が何らかの医療保険に加入している。勤め人は勤務先の健保、75歳以上は後期高齢者医療制度、それ以外の人は「国民健康保険」(国保)となる。国保の加入率は27.1%(2020年9月末現在)。4人に1人は国保に入っているが、保険料はきわめて高い。しかも支払いが滞ると自治体から「差し押さえ処分」を受け、そこでは違法な手口も横行している。ジャーナリストの笹井恵里子氏がリポートする――。(第2回)
自治体は「資格証明書の発行」より「差し押さえ」に注力
医療機関を受診する際に必要になる健康保険証。前回、国民健康保険(国保)は他の公的医療保険よりも、群を抜いて保険料が高いことを述べた。加入者は高い保険料に苦しむ。そうして国保料の納付が滞ると、通常の保険証から有効期間が短い「短期保険証」に切り替わる。さらに一年以上の国保料を滞納すれば「資格証明書」が交付され、保険診療は受けられるものの窓口では10割負担になる。
そして近年は地方自治体が「資格証明書の発行」よりも、「差し押さえ」に力を入れているという。長年、国保問題に取り組んできた大阪社会保障推進協議会事務局長の寺内順子氏が説明する。
「2000年に介護保険制度がスタートして、40歳以上の加入者に介護保険料がプラスされるようになって保険料が一層高くなりました。その頃から滞納処分が強化され、差し押さえの件数が格段に多くなったのです」
大阪社会保障推進協議会は厚生労働省のデータを基に分析を進めると、差し押さえ率が高い自治体が明らかになった。
きわめて高い県は、佐賀県、群馬県、長崎県だ(2016年度の分析)。例えば佐賀県は県全体で9億2641万円の滞納額の滞納額に対し、9億192万円の金額を差し押さえている。群馬県にいたっては滞納額が県全体で約38億8000万円に対し、60億1700万円も差し押さえている。なぜ滞納額より差し押さえ額が上回るのかといえば、「不動産(土地)」を差し押さえるからだ。
全国市町村・国民健康保険 差し押さえ率の高い自治体(2016年度)
滞納世帯数(滞納世帯率)/滞納額/差押数/差押金額
1)佐賀県 9509(8.6%)/926,416,790/5106/901,927,978
2)群馬県 42488(14.1%)/3887,144,723/15739/6017,474,774
3)長崎県 24914(11.5%)/2,242,667,813/7722/1,582,660,974
4)鹿児島県 30698(11.9%)/2,494,837,858/8473/1,937,594,179
5)福島県 52421(18.0%)/3,973,067,868/13172/4,876,088,123
※厚労省データを基に大阪社会保障推進協議会が分析・作成
滞納世帯数(滞納世帯率)/滞納額/差押数/差押金額
1)佐賀県 9509(8.6%)/926,416,790/5106/901,927,978
2)群馬県 42488(14.1%)/3887,144,723/15739/6017,474,774
3)長崎県 24914(11.5%)/2,242,667,813/7722/1,582,660,974
4)鹿児島県 30698(11.9%)/2,494,837,858/8473/1,937,594,179
5)福島県 52421(18.0%)/3,973,067,868/13172/4,876,088,123
※厚労省データを基に大阪社会保障推進協議会が分析・作成