日本人は全員が何らかの医療保険に加入している。勤め人は勤務先の健保、75歳以上は後期高齢者医療制度、それ以外の人は「国民健康保険」(国保)となる。国保の加入率は27.1%(2020年9月末現在)。4人に1人は国保に入っているが、その保険料はきわめて高い。しかも、その保険料はさらに高騰する恐れがある――。(第3回)

所得600万円だと「年88万円」が徴収される

国民健康保険料(国保料)の上限額は3万円引き上げた2022年度に続き、2023年度も2万円増額される見込みだ(健康保険料と介護保険料を合わせた年間の上限額が104万円となる)。

「上限額に適用される人は、高所得者だからやむを得ないのではないか」と思うかもしれないが、それは違う。国保料は他の公的医療保険――大企業に勤める労働者とその家族が加入する「組合健康保険(組合健保)」や、中小企業で働いている人が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、公務員や学校職員とその家族が加入する「共済組合」などと比べて圧倒的に高い。国保加入者は年齢層が高く、医療費が高くなりやすいからである。地域に医療費が多く発生すれば、それだけ保険給付費(自己負担額以外の費用)も上昇し、それに応じて保険料も高くなってしまうのだ。

例えば一昨年の私の場合、約600万円の所得に対し、国保料は約88万円である。所得の約15%を占めている。国保に加入していない人は、自身の所得の15%が健康保険料として徴収されることを想像してみてほしい。

一昨年の筆者の国民健康保険料。あまりに保険料が高額なので、昨年8月から「文芸美術国保」に移行。保険料は約半額になった。
筆者撮影
一昨年の筆者の国民健康保険料。あまりに保険料が高額なので、昨年8月から「文芸美術国保」に移行。保険料は約半額になった。

しかも国保料は今後さらに高くなる恐れがある。

「生活保護受給者の医療費」も負担させる方針

佛教大学社会福祉学部准教授で、『市町村から国保は消えない』『新しい国保のしくみと財政』(ともに自治体研究社)などの著書がある長友薫輝氏がこう説明する。

佛教大学社会福祉学部の長友薫輝准教授
佛教大学社会福祉学部の長友薫輝准教授

「生活保護受給者の医療費は、全額を医療扶助で負担していますが、これを国保料に移行させるという案が、今年6月に閣議決定された『骨太の方針2022』に記載されたのです。以前から財務省などがこのアイデアを時々打ち上げているのですが、もしこれが現実に実行されるということになれば、国保料は今よりもとんでもなく高騰します。生活保護費の半分を占めているのが医療扶助であり、これを国保で面倒みよ、ということなのです」

生活保護費負担金は全体で約3.7兆円(令和4年度)。そのうちここ10年はたしかに医療扶助が半分近くを占め、その額、約1.8兆円。

「今は主に国庫負担でまかなっている生活保護の医療費を国保に移行するのは、つまりは国庫負担の抑制でしょう。ただでさえ“所得なし”の層が3割を占める国保で、現在の支払いさえ苦しむ人たちに負担を押し付けるのは無理があります。しかも『骨太の方針2022』の“脚注”にそれが記されているのが姑息だと思いました」(長友氏)

たしかに「骨太の方針2022」の31ページを確認すると、<後期高齢者医療制度の在り方、生活保護受給者の国保および後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深めることなどを含む>などと小さな文字で記されている。