「コンビニ受診」ができたほうが医療費は安くなる

私はこれを聞いて、出産費用がそれを表していると思った。病気ではないという概念から、日本では妊娠・出産費用が保険適用ではない。そのかわり出産した者には出産育児一時金が支給される。これは国ではなく公的医療保険からの支給ではあるものの、出産費用も出産育児一時金も年々増額しているのだ。

出産育児一時金制度がスタートした約30年前は、30万円の支給額だったが、今では42万円。2023年4月から47万円まで増額される。出産育児一時金が増額されれば、医療機関の価格改定がされ、出産費用はさらに吊り上がるだろう。保険適用で「これがスタンダード」という規定を定めれば、医療機関が出産費用を吊り上げることはなくなるのではないだろうか。

また、日本では「命を救う」という“最後の砦”にどうしても注目がされるが、誰しも最初は「軽症」であり、この最初の段階で医療機関を受診したほうが医療費はかからない。

「医療機関に気軽にかかることは『コンビニ受診』として批判されますが、軽症段階で食い止めたほうが医療費を抑えることができます。政府が広報する“誰もが元気に長く働く”ことにもつながるはずです。ですから保険料の負担を軽くし、医療へのハードルを下げることが大事なのに、実際には保険料の負担を重くして受診を抑制するという逆方向に進んでいます」(長友氏)

病院の待合室
写真=iStock.com/gyro
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窓口負担が苦しいなら「無料低額診療事業」で検索を

国庫負担を上げる、すなわち国が医療にお金を出すということは、地域経済が循環することでもある。特に地方では医療機関は雇用を生み出す拠点でもあるからだ。

医療費のうち国の負担は約4分の1(11兆円)とされている。前回も述べたが、これ以上加入者に負担を押し付けるのではなく、国は公的医療保険への支出を決断するべきだろう。

最後に、保険証があっても窓口負担が払えないと悩む人に。全日本民主医療機関連合会(民医連)が窓口負担を払えずに重症化や死亡に至った事例を発表しているが、それを読むたびに胸が痛む。やっとの思いで保険料を払って、保険証があるのに、窓口で支払うお金がないために医療を受けられないなど本末転倒だ。

低所得者やDV被害者など生活困難者を対象として、無料または低額な料金で診療を行う事業所が全国に約680施設ある。体の調子が悪いなら、「無料低額診療事業」と検索して、該当する医療機関を早めに受診してほしい。

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