これを機に持続できるイベントの在り方を考えるべき
鉄道業界には苦い教訓もある。1960年代後半から1970年代前半にかけて巻き起こった「SLブーム」でも、人が殺到し、次第に収拾がつかなくなっていったのだ。
最終的にこのブームは、1976年に京都―大阪間開業100周年を記念して、動態保存されていたSLを用いた記念列車を運行した際、線路敷地内に侵入した小学生が列車と接触して亡くなるという悲劇的な結末を迎えている。これ以降、SLの動態保存は下火となってしまった。行き過ぎたムーブメントは必ず破綻を迎えるのだ。
幸か不幸か新型コロナウイルスの影響で、多くの人が集まるようなイベントの開催は当面、自粛されるだろう。イベントの開催が再び可能になったとしても、しばらくは「密」を避け、人数をコントロールする方向に進むはずだ。
だとすれば鉄道ファンも鉄道事業者も、ここで一度冷静になって、持続可能な鉄道イベントの在り方を模索する時期なのではないだろうか。
鉄道は公共交通機関である。一般利用者や近隣住民に迷惑をかけてまでイベントを行うのは本末転倒だ。鉄道を盛り上げようにも、ファンの関心が最初と最後という一過性のもので終わってしまっては、意味がない。非日常は、日常が続くからこそ、貴重なのである。