仕事という名の苦行が消滅する、AI時代の働き方
これまで人間にしかできないとされてきた仕事が、AI(人工知能)に奪われる。巷ではそんな不安の声が聞こえる。果たして本当なのだろうか。
「AIが人の能力を超え、我々の生活を一変させる『シンギュラリティ』へ到達するのは2045年といわれています。そうなれば9割の仕事が奪われると考えられます」
著者の中村伊知哉氏は、女性ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て、1984年に旧郵政省に入省。その後はスタンフォード日本センター研究所長や慶應義塾大学教授などを務めてきた異色の経歴を持つ傑物。
「振り返ればIT普及の際も、抵抗し、拒否する声はありました。ただ、ネットやスマホを使い出したら、仕事も暮らしも遊びも、より便利で豊かで楽しく変わりましたよね?」
中村氏は産業革命期の1810年代に、英国で繊維工業を中心に起こった職人や労働者による機械破壊運動「ラッダイト運動」を引き合いに出し、「蒸気機関や電気・石油による動力源も従来の仕事を奪った半面、多くの新しい仕事を生み出した。要は“空いた時間”ができて違う仕事をやるようになったんです」と指摘する。
実際、人口の9割が何もせず、1割だけが働いている世界は想定しづらい。これまでの産業革命と同じ現象がAIでも起こるはずだという。