平成の消費変化を象徴する日本の「国民服」

ファッション文化論、化粧文化論などを専門とする著者の最新刊だ。かつてはDCブランドやボディコンを着ていた時期もあるなど、著者自身も洋服へのこだわりが強いという。そんなおしゃれ好きな著者が、なぜユニクロというカジュアルファッションに興味を抱いたのだろうか。

甲南女子大学人間科学部文化社会学科教授 米澤 泉氏

「少し前まではユニクロの服は、おしゃれだとは思われていなかった。着るとしても、インナーなど外からは見えない部分に取り入れる程度。『ユニバレ』『ユニ被り』という言葉が流行ったように、『みんなが着ているユニクロを自分も着ているのは恥ずかしい』という消費者としての複雑な心理を抱えていた」

だが、最近になって、「インフルエンサー」と呼ばれる流行に敏感な若者の間で、ユニクロが肯定的に受け入れられるようになってきた。SNSや雑誌では、ユニクロを着こなせる人こそがおしゃれだと評価される。「ユニクロが苦手だった」という著者が本書を執筆した契機は、そんな変化にあった。冒頭ではこう述べている。