命と向き合いながら前へ進む研修医の物語
著者の中山祐次郎氏は、現役外科医。過去2000件以上の手術に参加してきた。一方で、旺盛な執筆活動を続けている。2018年上梓した『医者の本音』は14万部のベストセラーとなった。そんな中山氏の小説デビュー作が本書だ。
医療現場で日々起きていることを、できるだけ鮮度が高いまま切り取りたかった。とはいえ本書は暴露小説ではない。現実に打ちのめされながらも、一歩ずつ懸命に前へ進んでゆく新米研修医の物語だ。
「今まで私は、数多くの死を見てきました。30代、40代の若さで『自分はこの人生で何もできなかった』と後悔しながら亡くなっていった人もたくさん見てきた」
そんな患者たちの想いを伝えたくて書いたのが、最初の著書『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと』(幻冬舎新書)だった。同書では、普段は自覚しづらい命の価値を訴えた。
「自分は来年死ぬ。そう想像してみて、今あなたが本当にしたいことをしてください。そうすれば後悔のない人生になるのではないですか」と。
その後、ウェブや医師向けの専門誌などで執筆を続けてきた。だが、どんなに書いても、伝わらない層があることに気づいた。そういう層に、小説に乗せるかたちで問題提起をしたかったという。