職場で他者から無礼な態度を取られている
これは感覚的なものにとどまらず、行動レベルにも表れる。著者が17の業界の800人の管理職、従業員に対して行った調査では、職場で他者から無礼な態度を取られている人には次のことが言えるという。47%が仕事にかける時間を意図的に減らし、38%が仕事の質を意図的に下げ、78%が組織への忠誠心が低下したと感じている。そして何と80%が無礼な態度を気に病み、そのせいで仕事に使うべき時間を奪われているという。
無礼が生み出す経済的損失だけでなく、個人や組織の礼節を高めるための方法も提案されている。試しに32項目ある「礼節チェックリスト」をやってみた。ほとんど大丈夫だったが、「他人と関わらず、何でも自分ひとりだけで進めようとする」「人の話を途中で遮る」の2項目は「時々ある」に当てはまると感じた。特に後者は、相手の話が今一つ要領を得ないときに、「つまり、こういうことですよね」等と途中でまとめたがる傾向が私にはある。これは十分無礼なことなのだと自覚しよう。
最終章では、無礼な人から身を守り、ストレスをためないようにするための手法が紹介されている。具体的な「あの人」が思い浮かぶ人は、ぜひ試してみるといいだろう。
よく似たタイトルの『Think clearly』がベストセラーになっているが、個人的にはこちらがお薦め。ただ、1つ注文もある。本書では一貫して「礼節ある態度」「無礼な態度」を白黒はっきり分けられるものとして論じている。しかし、何を無礼に感じるかには個人差があるはずだ。同じことを言っても、力関係や、お互いの好き嫌いで意味合いは変わってくる。昨今のパワハラ論議にも関わる「受け止め方の違い」「礼節と無礼の線引き」に焦点を当てた知見にも触れてみたかった。
東京工芸大学教授
1963年生まれ。一橋大学社会学部卒業。ロンドン大学インペリアル校経営大学院修了。NTT勤務などを経て、2012年より現職。弟・大島新氏との共著に『君たちはなぜ、怒らないのかー父・大島渚と50の言葉』。