「まとめてやる」より「こまめにやる」ほうが効率的

非製造業の生産性向上については近年、経済産業省や日銀もレポートを出している。しかし、この重要テーマの体系化を試みたビジネス書は珍しいのではないか。少なくとも私は「こんなことを言う人は初めて」と感心しながら読んだ。

内藤 耕『時短の科学』(日経BP)

小売り、飲食、宿泊等のサービス業の年間休日数は製造業より平均10日以上少ない。時短を進め、労働環境を改善するために何をすべきか。製造業との違いは目の前の「顧客」の存在だ。いつ来るかわからず、ニーズもバラバラ、このやっかいな生モノがサービス業の効率化を阻んできた。ここに科学の目を向けなければ、生産性向上はありえない。これが本書の主張の柱である。

「手が回らない」「人手が足りない」と感覚的に嘆くのではなく、まずは現状把握。プロット分析では、横軸に客数、売り上げ、注文数等の作業量を反映するデータを、縦軸に労働時間を取る。すると作業量の割に労働投入量が少ない時間帯(つまり多忙)とその逆(つまりヒマ)がかなりはっきり表れる。顧客動向を完璧に予測するのは無理にしても、曜日や時間帯の傾向を摑んで人員を配置すれば、時短に貢献できそうだ。