ファミレスチェーン「サイゼリヤ」の客離れが止まらない。既存店客数は15カ月連続で前年割れ。低価格でイタリアンを楽しめる“サイゼ”に何があったのか。店舗運営コンサルタントの佐藤昌司氏は「全席禁煙を進めた結果、『ちょい飲み』で来ていた客が離れてしまったのではないか」と指摘する――。
撮影=プレジデントオンライン編集部

2017年秋からマイナス傾向が続く

イタリアンファミレスチェーン「サイゼリヤ」の客離れが深刻だ。2月の既存店客数は前年同月比1.7%減とマイナスだった。前年割れは15カ月連続となる。既存店売上高も同様に不調で、2月は1.5%減。11カ月連続でマイナスとなっている。

サイゼリヤの既存店客数は15カ月連続で前年割れとなっている(図表=2018年8月期決算説明会資料より抜粋)

それまでは好調だった。2017年8月期の客数は前期比1.6%増、16年8月期は1.8%増、15年8月期は1.2%増と、3年連続で前年を上回っていた。しかし17年秋から客離れが起きるようになった。以降、現在までマイナス傾向が続いている。

顧客満足度も低下している。日本生産性本部サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数飲食部門」で18年度は5位となったが、前年度の4位から後退してしまった。順位だけでなく、顧客満足度スコアもわずかに下がった。

サイゼリヤは、本格的なイタリア料理を低価格で楽しめることで人気を博してきた。例えば「ミラノ風ドリア」(税込み299円)とパスタ料理「アーリオ・オーリオ」(同299円)、さらにグラスワイン(同100円)を4杯注文しても、1000円でお釣りがくる。1000円でこれだけ楽しめるチェーン店を、筆者はほかに知らない。「サイゼ飲み」という言葉が広まるほど、居酒屋がわりにも利用されている。

連結売上高は順調に伸びている

サイゼリヤが低価格を実現できているのには理由がある。食材の調達から加工、物流、店舗での販売まで一連の工程をできるだけ自社で行うようにし、中間コストを極力省いているためだ。国内の5カ所に自社工場を設け、食材を加工して毎日店舗に届けている。パスタやチーズ、ワインなどはイタリアから直輸入し、一部の野菜は関連会社の農場で栽培。さらに牛肉には、オーストラリアに加工工場を設立し、ハンバーグや、看板メニュー「ミラノ風ドリア」のソースを製造している。

サイゼリヤの売上高は順調に伸びている。直近の連結売上高は前期比3.9%増の1540億円(18年8月期)だった。10年前の849億円(08年8月期)と比べると、1.8倍に増えている。また国内店舗数は1469店(18年8月期)で前期に比べて45店増えている。既存店売上高は客離れでマイナスだったが、店舗数の増加で全店売上高はプラスだ。これは海外事業が増収だったことも寄与している。