増税で据え置きも値上げも危険な道

ただ、今後の見通しは決して明るくはない。特に注意が必要なのは10月に予定される消費増税だ。サイゼリヤは、「299円」などと端数をつけて設定した価格で値引き感・割安感を演出してきた。端数価格を維持するため、14年4月の消費増税時は主要メニューで税込み価格を据え置いた。このため10月の消費増税でも、主要メニューの価格を据え置く可能性が高い。

増税時に価格を据え置けば、サイゼリヤの利益率は大きく低下するだろう。ただでさえ食材費や人件費などのコストは高騰している。サイゼリヤの18年8月期の売上高営業利益率は5.6%。前期から2ポイント低下している。かつては10%を超えていた時期もあった。利益率のさらなる低下は避けたい。

反対に、増税を機に値上げに踏み切れば、さらなる客離れが起きる恐れがある。居酒屋チェーン「鳥貴族」は17年10月に税抜き280円均一だった価格を298円に引き上げたところ、深刻な客離れが起きた。現在も客離れが止まらず、2月の既存店客数は前年同月比3.2%減。15カ月連続で前年割れが続いている。値上げ幅や対象メニューにもよるが、サイゼリヤも同じ道を歩まないとも限らない。

売りの「コスパの良さ」は失えない

サイゼリヤはコストパフォーマンスの良さが命だ。前述の顧客満足度調査でも、それは明らかになっている。コスパの良さを表す指標の「知覚価値」は飲食部門において18年度は1位だった。これで4年連続1位となっている。だが、知覚価値スコアは前年度から低下してしまった。外食企業の競争激化で、サイゼリヤのお得感が低下したと考えられる。この状況で、主力メニューの値上げは難しいだろう。

いずれにせよ、サイゼリヤは新機軸を打ち出す必要がある。特にメニューの強化が必須だ。コスパの良さを維持することに加え、消費者に飽きられないよう、付加価値の高いメニューを継続的に提供していく必要があるだろう。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
(撮影=プレジデントオンライン編集部)
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