NHK連続テレビ小説「虎に翼」が好調だ。
理由はいくつもある。
寅子(伊藤沙莉)が従来の朝ドラの主人公と異なるキャラクターであること。女性が弱者としてたびたび描かれるが、寅子は「はて?」と呟いた後に自然体で状況を乗り越える点。さらには生理の話が何度も登場したように、従来はあまり触れられなかったディテールが普通に描かれる新しさだろう。
こうした魅力は、視聴者層の変化にも表れている。
特定層の視聴率も測定するスイッチメディアのデータから、どんな人が今作に魅せられているのかを浮き彫りにし、同作の可能性を考えた。
従来と異なる視聴層
朝ドラは通勤通学前の忙しい時間帯に放送される。
このため視聴率の多寡は多少生まれるものの、視聴者層は大きく変化することがない。ところが今作は、「ブギウギ」(23年度後期・主演は趣里)や「らんまん」(23年度前期・主演は神木隆之介)と比べると、明確な変化が生まれている。
スタート3週間の平均を比べて見よう。
個人視聴率は3作とも7%強で大差はない。ところがF3~4(女性50歳以上)では5~6%ほど「虎に翼」が上回った。ただし男性75歳以上では同ドラマは1割前後低い。
つまりドラマが描く時代に近い世代では、男性はあまり受け入れていないが女性は惹きつけられているようだ。
もう1つ、変化が生じた層がある。
女子高生・女子大生・Z世代・M1などだ。いつもより2割前後も高くなっている。これらの変化は、主人公のキャラクターによるところが大きいと思われる。
従来の主人公は、“女だてらに”奮闘することが多かった。
「木に登る」「水に落ちる」「男社会に飛び込む」などの場面が印象的だった。ところが今作の寅子は、“お見合い3連敗”で始まり、「女性は無能力者」と定義される社会で覚醒するものの、“生理で4日”も寝込んでしまう。明らかにいつもの朝ドラのエネルギッシュな女主人公とは異なる。
かくして伝統的な朝ドラを好む75歳以上の男性に脱落者が生まれた。
ただし女性は違う。よりリアルな女性の位置づけの中で奮闘する寅子に、中高年の女性が熱い視線を送っている。また若年層も、一定程度変化した日本社会が、どこから出発したのかを目の当たりにし、興味を持った人々がいるようだ。