視聴者が「自分事」として見られる工夫がなされている

最も力強いのは「自分らしさにこだわる」層だ。

1割弱落としたが1割超戻して、第1週を第3週が上回った。“無能力者”と位置付けられ、実際の生活の中で数々の理不尽に直面する女性たちが、どう状況を打開し“自分らしく”生き始めるのか、女性たちの熱い視線が送られていることがわかる。

しかも同作は、自分事として見られる工夫がなされている。

主人公の周りに、さまざま課題を抱える女性たちが配置されているからだ。貧農だった実家を飛び出した山田よね(土居志央梨)、華族のしがらみにもがく桜川涼子(桜井ユキ)、朝鮮半島からの留学生・崔香淑(ハ・ヨンス)、猪爪家に嫁いできた寅子の親友・花江(森田望智)などだ。

視聴者は誰かを身近に共感しながら見ている。

各人の課題が、どう乗り越えられるのかを固唾かたずをのんで見守っている。半年におよぶ放送期間に、カタストロフの瞬間を幾度と迎えられる仕掛けとなっている。

もちろん“無能力者”と女性を貶める男たちも何人も登場するだろう。敵をどう倒すのか、次々と現れる難敵とどう対峙するのか、物語を深める設定が次から次へと出てくるのだろう。

女性ならではの柔らかい対応で、各種の課題を解決すれば従来にない名作になる可能性がある。社会のシステム・仕掛けというフレームを前提に、登場人物たちの情念が爆発すれば、間違いなく記憶に残る斬新な朝ドラに進化できるだろう。

制作陣の力量に期待したい。

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