昨年の「どうする家康」から「光る君へ」とバトンタッチされたNHK大河ドラマの視聴者層が大きく変化している。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「大学生を含む20~40代の女性からの支持が大きく、1000年前に生きた同世代の紫式部の心の内面、家との関係、恋愛感情、そして社会と自分の関係を描いたドラマに共感している。女性受けする現象は、受信料問題を抱えるNHKの経営戦略とも合致する」という――。

NHK大河ドラマ「光る君へ」の序盤が終了した。

当初3カ月の視聴率を比べると、去年の「どうする家康」より低い。ただし3カ月の推移をみると、4分の1ほど視聴者が消えた去年と比べ、「光る君へ」はほぼ横ばいと健闘している。

実はその内実を分析すると、NHKの経営戦略を体現する「光る君へ」の存在意義が浮かび上がる(スイッチメディアが関東1万2000人から集めた視聴データで分析)。

視聴率の傾向

まず大河ドラマ序盤の平均視聴率を去年と今年で比較してみよう。

【図表】大河ドラマ2本の特定層別視聴率比較
スイッチメディア「TVAL」データから作成

個人視聴率全体では1割5分ほど低い。

中でもT層(男女13~19歳)では4割前後も低い。人気の松本潤が主役で分かりやすい戦国ものに対して、馴染みのない平安時代を舞台に貴族の出世競争や恋愛など人の内面を描いた「光る君へ」は、身近な物語と感じられなかったようだ。

ただし中高年では健闘した。

3~4層(男女50歳以上)では、1割前後低い程度とまずまずの数字。合戦や武将の栄枯盛衰などわかり易いシーンはなくとも、人の内面を凝視するドラマでも中高年は一定程度注目することがわかる。

性年代の差で特筆すべきは大学生。

高校生では男女とも「光る君へ」は5~6割低くなったが、大学生では逆に高い。特に女子大生では1.2倍超となった。同世代の千年前に生きた紫式部の心の内面、つまり家との関係、恋愛感情、そして社会と自分の関係を描いたドラマに、女子大生は大いに注目したことがわかる。