18年ぶりに復活した「新プロジェクトX~挑戦者たち~」が好発進した。大学生や若い女性などに好評を博すなど同時間帯視聴率で1、2位を競った。だが、元NHK職員で同番組の前作シリーズに携わった次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「テレビ業界からは早くも“初めに感動ありきのマスターベーション番組”との辛辣な指摘も出ている」という――。
NHK放送センター
NHK放送センター(写真=Samulili/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

NHKの「新プロジェクトX~挑戦者たち~」が18年ぶりに復活した。

初回の個人視聴率は6%超、SNSにも高く評価する声が集まった。しかしテレビ関係者の中には厳しい見方をする人が少なくない。かくいう筆者も、前シリーズの初回に関わった経緯もあり、致命的な欠落を見つけてしまい残念でならない。何が欠落なのか記しておく。

高視聴率・高評価という現実

復活版の初回は「東京スカイツリー 天空の大工事~世界一の電波塔建設に挑む~」。地上波テレビの完全デジタル化が遂行された頃に完成した東京スカイツリーの、高さ634mの天空の現場に挑んだ技術者と職人たちのドラマが描かれた。

【図表】各局の個人視聴率推移【4月7日夜・関東地区】

個人視聴率は6%超と、同枠でそれまで放送されていた「ブラタモリ」に迫る高視聴率だった。

同時間帯の横並びでは、1~2を争う好記録だった。特に男子大学生やドラマ好きな20~30代女性では「ブラタモリ」を上回り、NHKの番組では珍しく若者にもよく見られたのである。(以上、スイッチメディア関東地区データによる)

SNS上にも高評価の声が殺到した。

「(関係者の)熱意に感動」「見入ってしまう」「様々な人間模様に涙」など、評価の声が溢れた。Yahooリアルタイム検索では、8割の投稿が肯定的だったと記録されている。

しかし「感動ありきの姿勢に違和感」など、テレビ関係者の中には問題視する人も少なくない。

筆者は2000年に始まった前シリーズの初回で、NHK職員として、番組をどう作ったら多くの人に見てもらえるかという調査を担当し、その時にできた事とできなかった事を把握しているだけに、今回復活した初回を見て暗澹たる気分になってしまった。