NHKは3月20日、大谷翔平が所属するLAドジャースのソウルでの開幕戦の様子を看板ニュース番組「ニュース7」内で生中継した。元NHK職員で次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「若年層の視聴率が急騰したため、若年層対策が急務なNHKの狙い通りにはなった。しかし、公共放送の報道番組がこれでいいのか、という声もSNSにはあった」という――。
NHK放送センター
写真=iStock.com/egadolfo
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視聴率快進撃

韓国ソウルでMLB開幕戦が行われた先週水曜(20日)、NHK「ニュース7」(総合1:毎日午後7時~)の視聴率は急騰した。

サブチャンネルで中継しただけでなく、ともにWBC日本代表のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が投げ大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)と対決する1回表の攻撃を、ニュースを中断してサブ以外にメインチャンネルでも放送したことが大きい。結果としてこの日の個人視聴率は最高で約14%に達し、前十週平均の2倍近い視聴率となった。しかも、若者では3倍前後に急伸した年層もあり、受信料制度維持のため若年層対策が急務なNHKにとってはウハウハの放送となった。

ところがNHKの看板報道番組内でMLBの試合を10分強も中継したことによるハレーションも起きていた。大谷が強豪ドジャースに移籍した最初の公式戦での、NHKの恍惚こうこつと不安を考えてみた。

この日の「ニュース7」は普段と比べトンデモない数字となった。

【図表】3月20日(水)夜の個人視聴率推移
出典=スイッチメディア「TVAL」関東地区データから作成

オープニングで試合開始直前の大谷の姿を生中継したため、冒頭数分で数字は爆上げ。その後しばらくタンカー転覆などのニュースが伝えられた後に、プレイボールにあわせて7時5分頃から野球中継に戻ると個人視聴率は3倍近くまで急騰した。

1回表の終了で中継からいったんニュースに戻ったが、視聴率は大きくは落ちなかった。それだけでなく、異例の野球中継を差し込んだためか番組全体は通常時の11分拡大版となったが、前十週平均の2倍という異例の高値になった。

この措置への驚きの声は、SNSにもいくつかあがった。

「ニュース7のトップがMLB開幕戦とは驚いた」
「ニュース7見ようとしたらオオタニさんばかりでビックリ」
「ダルビッシュvs大谷見れて良かった」

ニュースの後、MLB中継は7時40分頃から10時20分まで続いた。そこまでの3時間ほど、NHKは他のチャンネルに3倍以上の圧倒的な大差をつけた。大谷効果は絶大だったのである。