※本稿は、野口悠紀雄『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
定年後の居場所が家庭にない
定年退職すると、生活スタイルの激変は避けられません。それまで会社の仕事だけの生活をしていた人には、ほぼ確実に生じます。環境が大きく変わると、メンタルに不調をきたす人が増えます。
日本の場合、会社の中でずっと生きてきた人が多く、それらの人々は、定年になって全く違う世界の中で生活することになる。しかし、地域の中でうまく過ごすこともできない。そのような状況にある高齢者が、非常に多くなってきているのは、間違いなく事実です。
「定年うつ」とは、仕事一筋だった人が定年退職を迎え、急にやることがなくなり、自宅に引きこもって暮らすうちに、うつ病になってしまうことです。趣味もなく、人間関係のほとんどが仕事に関連したものだったので、会社で働かなくなると、社会とのつながりが失われてしまいます。
仮に十分な年金で生活できる経済的に恵まれた人でも、生活スタイルの変化は避けられません。電話で誰かと話すことも考えられますが、相手の迷惑になる場合もあるでしょう。
奥さんから「週3日は外出して」と言われて、一日中電車に乗っていたという人もいます。コミュニティの集まりに参加しても、そこで自分が無視されていると感じて、怒ってしまう人もいるでしょう。
定年後、無職に陥らないために40代から備える
幸せなシニア生活には、さまざまな条件が必要です。それらをすべて満たすのは、決して容易でありません。
重い病気にならず、健康でいることは、どうしても必要な条件。それを満たせても、60代以降に職があるかどうかが問題になります。
「人生100年時代」では、シニアになっても働くことが当たり前になると考えられます。しかし、「存在を認めてほしい」「社会と関わり続けたい」と考えて職を求め、ハローワークに通っても、求人があるのは限られた職種というのが現実でしょう。
40代、50代のうちから勉強を続け、それまでの本業以外にできる仕事を見つけ、定年後に備えることが必要です。
資格を取り、仕事を続けられれば、コミュニケーションもでき、充実した生活を送れるでしょう。ただし、資格を取ることと、仕事を得られるかどうかは別のことです。
経済全体では労働需給は逼迫するので、好みをいわなければ仕事はあるでしょう。ただし、肉体労働、低賃金になるかもしれません。