「ちょい飲み」ブームが落ち着いた

全社レベルでは成長が続いているので、一見すると何も問題がないように見える。しかし、主力の「サイゼリヤ」は国内で客離れに苦しんでおり、今後の成長が危ぶまれている。客離れの原因は何だろうか。

ひとつは「ちょい飲み」ブームの一服がある。サイゼリヤの客数が伸び始めたのは15年8月期からだが、この頃から「ちょい飲み」がブームになった。牛丼チェーン「吉野家」は15年から酒類とつまみを提供する「吉呑み」の本格展開を開始。ファミレス各社も参入し、「ファミ飲み」という言葉も生まれた。飲食店各社が「ちょい飲み」に参入し、市場が活性化したわけだ。

このブームで、「サイゼ飲み」にも注目が集まるようになった。メディアでは「サイゼでせんべろ」(サイゼリヤで1000円でベロベロに酔えるの意)という言葉も踊った。これは、サイゼリヤの客数が伸びた時期と重なる。

2015年から17年頃までの客数増加の裏に、「ちょい飲み」ブームがあったと考えることはできるだろう。こうしたブームが落ち着くと、反動で客離れが起きているようにみえる。

禁煙化による客離れは短期で済む

もうひとつは、「全席禁煙」だ。サイゼリヤは17年末に全店舗を禁煙化する方針を表明した。19年9月までに、喫煙ブースを設けて、客席は全席禁煙に移行するという。1月末時点では全店舗の6割強に当たる約700店が全席禁煙になった。これにより一部の喫煙客が離れていったのではないか。

喫煙者は減っているとはいえ、全く無視できるほどではないだろう。サイゼリヤは「サイゼ飲み」という言葉があるように、類似業種の中では酒類の販売が強い。一般的に喫煙者と相性がいいとされる「居酒屋」に近い側面があり、サイゼ飲みを楽しみながら喫煙していた客は、全席禁煙でほかの店に流れてしまったのだろう。

もっとも、禁煙化による客離れは短期的なものだろう。中長期的には喫煙を嫌う人を取り込むことが期待でき、喫煙客の離反分の穴埋めはできる。

昨年6月からほぼ全店で全席禁煙に踏み切った居酒屋チェーン「串カツ田中」は、喫煙客は減ったものの、禁煙化をアピールしたキャンペーンを実施するなどしてタバコを嫌う家族客を新たに取り込むことに成功し、既存店客数は好調に推移している。2月の客数は前年同月比6.2%増となり、5カ月連続で前年を上回った。サイゼリヤも、やり方次第で同様に新規顧客を獲得できるだろう。