地球が人類にもたらした「遺産」をチェック
地球上の自然環境がそこに住む人々の生き方を決定する、という考え方がある。これは「環境決定論」と呼ばれ、四季が織りなす大自然に囲まれてきた日本人には比較的身近な見方でもある。
本書はこうした立場から、地球の誕生からさまざまな変遷を経て人間がどのように現在に至ったかを克明に論じる。副題に「人類を決定づけた地球の歴史」とあるように、地質学・地理学・地球物理学を駆使して人類の進化をもたらした原因を探る。
具体的には、地球内部の構造、プレート(岩板)の運動、海洋の大循環、気候変動、鉱産資源の形成など、最先端の地球科学を解説しながら独自の文明論が展開される。確かに、日本のようにプレートがぶつかる境界で育まれた文明の多くは、地震や噴火の激甚災害と切り離せぬ運命にある。
著者は新進気鋭の宇宙生物学者。科学をわかりやすく伝える稀有の文才を持つ。前著『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』が世界的ベストセラーとなったように、文明の盛衰に関するユニークな切り口には定評がある。
本書でも第1章「人類の成り立ち」から第5章「何を建材とするか」を経て最終章「エネルギー」に至るまで、地球が人類にもたらした「遺産」をくまなくチェックする骨太の構成となっている。