ハイテクごみ集積場

たとえば、先端産業を支えるレアメタルの供給に危機感を持つ著者は、日本の「ハイテクごみ集積場」に着目する。「そこに埋まっているごみには、世界で年間消費される金、銀、インジウムの3倍が、そしておそらく白金は6倍も含まれていると試算されている」(192ページ)。地球遺産を人間界で循環する「都市鉱山」まで拡げれば、我が国は資源大国になるのだ。

人類を含めて地球上の生命は、46億年という地球の長大な歴史を繙くことで初めて正しく理解できる。われわれ地球科学者は「地球と生命の共進化」と呼ぶが、地球内部の元素とエネルギーが生命を誕生させただけでなく、生物が地球環境を大きく変えてきた。

「人類はいまでは地球の陸地の3分の1以上を農地に変えた。(中略)そして、僕らの産業は火山よりも多くの二酸化炭素を吐き出し、地球全体の気候を温暖化」(295ページ)させたのである。

長らく西洋では、人間が望む形に自然を改変する「支配型」の自然観が強かったが、近年頻発する気象・地震災害によって、大自然の猛威には逆らえないという「畏敬型」の自然観が浸透している。

環境問題はこの両者に揺れながら激化しているが、本書はグローバル経済を左右する地球環境のベースを正しく理解するうえで恰好の教材を提供する。翻訳も上質の日本語で、日ごろ「教養不足」を痛感しているビジネスパーソンにぜひ勧めたい。

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