慶大生に人気沸騰「伝説の講義」を再現した一冊

本書は、著者が慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)で、2011年から17年まで特別招聘教授として担当した「経営・財務戦略論」の講義を紙上に再現した書籍である。著者の講義は学生の間で人気が沸騰し、今も「伝説の講義」として語り草になっているという。

吉田篤生『慶應義塾大学 大学院 SDM伝説の講義 企業経営と生命のシステムに学ぶデザインとマネジメント』(日経BP)
吉田篤生『慶應義塾大学 大学院 SDM伝説の講義 企業経営と生命のシステムに学ぶデザインとマネジメント』(日経BP)

「経営・財務戦略論」といっても、本書は財務諸表の読み方などを教える一般的な講義・書籍とは、明確に一線を画している。

世界の経済、政治、社会システムが500年に1度の大変革期を迎えている今、企業の経営はどうあるべきか、ビジネスリーダーはどこに向けて舵を切るべきなのか。そんな切実で本質的な問題について、主に創業100年超、あるいは100年近い日本の長寿企業の経営やリーダーシップのあり方を紹介しながら指針を示しているのだ。

しかもその内容は、著者の税理士としての豊富な経験と専門知識だけでなく、物理学や生物学、歴史、哲学などの知識もちりばめられ、具体的かつ刺激的だ。

著者は、現在を500年前の大航海時代になぞらえ、新たな時代への幕が開く直前の混沌の状態だととらえる。例えば経済システムについては、高度な金融技術がマネーゲームの隆盛を招き、深刻な格差を生じさせてしまっている。企業の野放図な成長志向は、環境破壊や地球温暖化の一因ともなっている。