「意志の力」で、不適切な行動を変えようとするのは無駄

仕事がうまくゆかないとき「自分の意志が弱いから」と落ち込む人は少なくない。しかし、どう気合いを入れても集中力が続かないことはよくある。本書はそうした悩みを持つ人に一筋の光をもたらす、優れた自己啓発書である。

ベンジャミン・ハーディ『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(サンマーク出版)
ベンジャミン・ハーディ『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(サンマーク出版)

著者は米国の組織心理学者。成功するために「意志の力」を用いるのは大間違いだと説く。意志に頼っても、過去の自分からは脱却できないのだ。

反対に、自己の内部ではなく外部の環境を変えることで、無理なく状況を変化させる方法を指南する。副題に『科学が証明した自分を変える最強戦略』とあるように、「科学の伝道師」を標榜する評者が納得した点を紹介しよう。

そもそも科学の本質は「認識・予測・制御」にある。つまり、事実を精査し現象を「認識」し、未来を「予測」し、よい結果が出るように「制御」する。この3項目では「認識」が最も重要で、成功を妨げる日常習慣を冷徹に分析することを薦める。

たとえば、仕事に集中できないのは、余計なことに気が散るからだ。人は気の進まない仕事を与えられると逃避行動に移る。おなじみのネットとスマホの中毒だ。