メディアの支配権を巡る攻防を描く、骨太のノンフィクション
著者は前作『メディアの支配者』で、フジサンケイグループに君臨した鹿内家の盛衰を描き、講談社ノンフィクション賞、新潮社ドキュメント賞をダブル受賞。それからなんと14年ぶりに、続編ともいうべき本書を刊行した。
日本テレビ、TBSからかなり遅れて、テレビ朝日とフジテレビが開局したのは1959年。黎明期の民放テレビ局は「金のなる木」で、満州帰りの山師のような連中が群がった。小針暦二や萩原吉太郎といった「政商」も暗躍し、郵政を牛耳る田中角栄は電波利権をほしいままにした。
そのフジとテレ朝を股にかけて権勢をふるったのが、教育出版「旺文社」を創業した赤尾好夫だ。支配下の文化放送を通じて両局の大株主となり、複雑な二重らせん構造を作り上げる。フジは鹿内家と“棲み分け”、自身はテレ朝の代表権を死の直前まで手放さなかったのだ。
ところが後継者の長男・一夫は、家業に関心を示さず、文化放送社長に就任したはいいが、月に1回の取締役会に出席するだけ。株の価値には敏感で知識も豊富だったから、ひたすらマネーゲームにのめり込む。80年代後半の異常な株ブームに乗って、暴利をむさぼった。