国土面積が日本の四国くらいしかないイスラエル

文革時代、黒竜江省の農村に強制移住させられた経験から、心のどこかにずっと農業分野への関心の根が張っている。

竹下正哲『日本を救う未来の農業』(ちくま新書)

中国において、農業はさらなる経済発展のアキレス腱となっており、農産品の安全・安心問題も多くの消費者の心配事となっている。そのせいか、近年は作家、記者、技術者、金融業従事者、企業経営者といったエリートたちが転職して農業に従事するようになった。私が「新農人」と呼んでいる彼らに日本の農業を紹介しようと、生産現場などに積極的に案内している。

しかし、その現場を見れば見るほど、日本の農業の生産性の低さ、規模の小ささ等々に対する不満が膨らんでくる。本書を目にしたとき、躊躇せずに書評の対象に決めた。

なぜ、国土面積が日本の四国くらいしかないイスラエルが、日本の農業を救う星なのか。水資源の少ないイスラエルから学べるのは、主に配水管、チューブや弁などの設備を使い、農作物に与える水や肥料の消費量を最小限にする点滴灌漑技術ぐらいだろう、などとぼんやり考えていた。