人との情緒的な関わりに喜びも関心も持たぬ「新人類」

著者は、〈現代の奇病〉と日々戦う精神科医だ。戦前にはほとんど見られなかった、境界性パーソナリティ障害や拒食・過食症、子供の鬱や躁鬱、ADHDなどの不可解な症状と、30年以上にわたって向き合い続けている。

岡田尊司『ネオサピエンス 回避型人類の登場』(文藝春秋)

これらの症状は1960年代頃から目につき始め、80年代に急増、2000年代に大爆発を起こしている。

その原因は何なのか。

著者はまず、問題解決の糸口として、人間同士の「絆」に着目した。幼児期に親子の間で育っていく「愛着」。それが何らかの要因で傷つけられると、長じて精神的に不安定になり、様々な問題が生じやすい。そこで親子や家族間の愛着に働きかける独自のアプローチを開拓し、臨床家として手応えを得てきた。

その著者をして、〈自分が行っていることが、激流に押し流された、何千、何万という人々が奈落に落ちていくなかで、わずか一人二人を抱き上げようとしているようなものかもしれない〉と絶望的に言わしめる事態が、いま静かに進行している。

人との情緒的な関わりに喜びも関心も持たない人々が、世界各地で急増しているのだ。彼らの愛着スタイルを、「回避型愛着」と呼ぶ。