少ない投資で確実に儲けるイスラエルの農業

しかし、本書を読んでびっくり。単位面積における生産高、輸出実績、成長率などを見ると、イスラエルは農業先進国といっても過言ではないという事実を知って、大いに勉強になった。

たとえば、農業大国といわれるオランダは野菜などの輸出高が世界2位だが、その輸出先はドイツ、イギリス、ベルギー、イタリア、スウェーデン、ポーランド、フランスといった近隣国にほぼ決まっている。距離的には、東京―青森間または東京―札幌間といったところだ。

しかし、イスラエルは本当に遠方にある国々にピーマン、パプリカ、アボカド、ニンジンなど数多くの野菜を輸出している。その輸出先はイギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、ロシア、カナダ、ブラジル、インドなど、まさに地球全体だ。「そういった意味では、イスラエルこそが世界最大の輸出国とみなしてよい」と著者は言い切っている。

そして、もっと重要なのは、イスラエルの農業はオランダのそれほどお金がかからないことだ。少ない投資で、確実に利益を上げることができている。「災害の多い日本に応用がしやすい」という著者の評価もうなずける。

三ちゃん農業、後継者問題、土地規模の小ささなど、日本の農業と似た悩みを抱える中国に対しても、イスラエルの農業はいろいろなヒントを与えてくれる。それは本書を読んだ私の第一の感想でもある。

お金がかかるオランダの農業は日本に不向きと著者が指摘しているが、同様にお金がかかる、政府から補助金が大量に支給される日本の農業も中国に不向きだと、私は強く再認識した。機会があれば、イスラエル農業の現場を見てみたい。

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